「ふざけんなよ。どっちかに決めな」「嫌だ」
- 作者: 山田詠美
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2003/01/15
- メディア: 文庫
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私の中での第一次山田詠美ブームは中学三年生のときでした。この頃はアホみたいに本を読んでたのですが、ライトノベルや図書館でおおはやりのぼくらシリーズとは読みたくなくて、山田詠美とかばかり読んでました。われながら嫌なガキだわ笑。
その時の記憶のせいだと思うのですが、山田詠美の小説は「どこか擦れててじとっとした地下を好む主人公」のイメージばかり持っていました。そして、そんな山田詠美ばかりを結う学生のときに読んでいたのは、モラトリアム時期にありがちな「背伸びしたい」「自分は人とは違う」意識のせいだったと思います。当時お気に入りだった「ぼくは勉強ができない」は、主人公の秀美みたいな考えの高校生になりたいって思ってたぐらいですもの。確かに秀美はすごく面白い男子だなぁと思うけど、今考えると、あまり付き合いたくないタイプだと思ったり。それは置いておいて。
なんとなくで、手にしたこの「A2Z」でしたが、読んでびっくらしました。結論を言うと、すごくおもしろかったんです。解説で江國香織が書いてましたが(読んだのは文庫版)、山田詠美は「恋の素晴らしくいとおしい一瞬」を描くイメージがありまして。この本も「不倫の恋の背徳と楽しさを味わいつくす擦れた大人の女性の恋」だと思ていたのですが、ところがどっこい。器用なようで不器用な主人公や周りの大人たちにすごく納得したし、すごく響きました。悲しくもなって、切なくもなって、泣きそうでした。山田詠美が変わったのか、読んでいる私が変わったのか・・・おそらく両方なんだと思います。今になってやっと、背伸びすることなく山田詠美を読めるようになったのかなぁ・・・。
私も「おかえんなさい」って言い合える結婚がしたい。なんか読み終わったあと心がほっこりできた、そんな小説でした。そんなわけで、これからまた手持ちの山田詠美を再読しようと思いますよ。まずは「姫君」でも。
余談。もしも郵便局で働く男の子と恋したら、絶対ラブレターを速達で出す遊びをしたいって思った。終わりにはもちろん、サンキューレターで。
余談2。「ぼくは勉強ができない」に出てくる主人公の母がさらりと出てきて、嬉しかったです。母変わってないし。むしろかっこいいし。秀美も話の中に出てくるし。